一歩踏み出さないルール
いまここで、目の前にいる上司の前髪を毟ってみたらどうなるだろうとか。あるいはまた、駅のホームで待っているときに一歩大股で、線路側に踏み出してしまったらどうなるだろうとか。
こんなふうに、物理的にはそれを為すのはとても簡単なんだけど、精神的にはものすごいパワーが必要なことってありますね。そして、だからこそ私達の世界は成り立っているんだなあ、と感心してしまうことがたくさんありますね。
会社の休憩室の窓からは、とても大きな交差点が見下ろせる。そこでは数センチ数ミリの自動車が、ぶつかることなく行き交っている。自動車ひとつひとつに乗っているのが、ちゃんとひとつの意志をもった人間。みんながみんなぶつからないように、ある規則に従って、しかもちゃんとぶつからないでいる。すごいなあ。気持ち悪いくらいだなあ、と思ってしまう。
それにひきかえ、都会の道を歩けば、いろんな人にぶつかりそうになる。実際にぶつかる。舌打ちされる。嫌な気持ちになる。
この違いって、なんだろうと考えたとき。その答えは、やっぱり拘束力のあるルールの有るか無いか、なんだろうと思う。みんながみんな適切なルールにしたがって歩けば、きっともっと、ビルから見下ろす自動車たちのように、平和にぶつからずに済む。
でもなぜだろう、それはそれで、嫌だなあ。